Naruto
作品『鳴門』
再興第44回院展出品
紙本彩色、額
128.8×160.9cm(文藝春秋表記)
128.5×160.5cm(北海道立近代美術館表記)
129.0×161.0cm(日本経済新聞表記)
山種美術館所蔵
1959
家内の父の33回忌かの法事に
徳島へ行った帰りに鳴門を見た。
淡路島の洲本へ行く途中に渦の立つ所がある。
小さな汽船がそばまで行く。
渦は凄まじい轟を上げる。
上る人の少ないデッキの上に上ると
立っていることが出来ないが、
後ろから帯を押さえてもらって写生する。
写生と言っても符牒のような心覚えである。
船は一日に何回も出ないが、
何回か乗ってその動的な写生をとった。
この作品は、従って、印象をたよりに制作した。
(文藝春秋刊『奧村土牛/自作自解』より jul.25 1979)
今年の7月、関西に旅した時、
淡路島から四国へ渡る半観光船のような
小さな汽船の上から鳴門の渦を見た。
潮流の加減で始めは線だけの渦だが、
だんだんこの作品のような
白涛の渦を見せるようになる。
汽船の上からは5,6分かと
思われる短時間の印象だったが、
私が考えていたよりも
案外に小さいのが意外だった。
が、これは季節によって異なるし、
満潮の時が大きくなる。という話を聞いた。
色刷にどの程度の色が出たかと思うが、
下地に群青を塗ったり、
いろいろと変化して
結局あのようなグレー調のものになった。
自然の大きさはもちろん表せなかったし、
自分の受けたものの一部しか出せなかった。
もい一度大きな渦の時に見たいと思っている。
(『三彩』119号 Oct. 1959)
| Naruto 下図『鳴門』 紙本 23.3×33.7cm 山種美術館所蔵 1959
| Gold pot 作品『金鯉』 清流会第11回展出品 紙本 66.8×81.9cm 1959
武者小路先生のお宅へこの時代よく伺った。 池に金鯉という珍しい鯉がいるから見せて上げると、 先生自ら大きな玉網ですくって、 大きな盥に入れて、写生しろと仰有る。 いい工合に写生帳を持っていて、 それから三日ばかり通った。 行く度に先生は餌をやったりなさる。 先生が池に近づきなさると この鯉がすぐ寄って来るのである。 武者小路先生と申せば、 『白樺』に西洋の絵画や彫刻の複製が毎号掲げられた。 私はこれから大きな影響を受けたことを感謝している。
(文藝春秋刊『奧村土牛/自作自解』より jul.25 1979)
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