8 公衆電話

              Public telephone 公衆電話

1989年、長年住みなれたロスアンゼルスから帰国したとき、電話が必要となり(その頃、携帯電話はまだ普及していなかったので家庭用電話だった)、近所の家電量販店に買いにいった。私はシンプルな電話機が欲しかったのだが、そのようなものは1台もなかった。 

すべての電話機には、ボタンがやたらと付いて煩雑きわまりない。店員に「話をするだけのシンプルなものはないの?」と尋ねても、「何を言ってるんだ、日本の電話機はこうなんだ」と馬鹿にされた。腹が立ったので彼に「それじゃ、この機能を全部使いこなせる人はいるの?」と聞いてみた。すると、「イヤ、それはいないでしょう」との返事。 

必要ない人には余計な機能をつけず、シンプルなものを作ったらどうなのだろう。その時は仕方なしにボタンの少ない安価なものを買ったが、それでも2万6千円もした。値段もアメリカに比べたらベラボウに高い。 

日本人は金持ちだなと思った。その頃、アメリカの電話機は20ドル位から購入でき、日本円にして5000円も出せば良いものを買うことが出来た。勿論日本の電話機のように多機能ではないが、シンプルでとても使いやすいものであった。 

以降、毎年ロスアンゼルスを訪れているが、改めて電話代の安さにビックリする。私が住んでいた頃には、日本はアメリカの4倍の電話料金であったことを思いだす。今回5ドルのテレホンカードをチャイニーズ・マーケットで購入したら、これでアメリカから日本に2時間50分もかけられるのである。 

このテレホンカードは地域別になっていて、アジア、ヨーロッパ、アメリカ国内、アフリカなど様々な種類がある。自分がかける地域カードを買えばよい。日本も以前から比べると安くなったが、まだまだ高いのが実情だ。毎日の生活費は安いにかぎる。 

話は変わるが、ある事件をきっかけに100歳以上のお年寄りが多数行方不明になっていたのが判明した。朝日新聞(2010年8月13日付)によると279名もの不明者が見つかったという。長寿国と称された日本は、このような現実みのない統計の上に成立っていたことが暴露された。真実を知れば、世界一の長寿国と浮かれている場合ではない。今こそ、基本を大切にした社会づくりが必要なのではないか。 

文:吉田千津子 写真:奥村森 

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