4 コローが描いたシャルトル大聖堂

       Cathedrale Notre-Dame de Chartres シャルトル大聖堂

フランスが誇る文化遺産シャルトル大聖堂。青い空に向かって突き刺すように伸びる2本の尖塔は左がゴシックで右がロマネスクと異なる様式ながら、不思議に調和しているのが面白い。ジャン・バティスト・カミーユ・コローは1830年、「シャルトル大聖堂」と題して作品を描いている。

コローは1796年、パリで婦人装身具店の息子として生まれた。ルーアンで教育を受けた後、パリに戻り洋装店に奉公した。26歳頃から画業に専念、ミシャロン、ベルタンの門下に入り古典的伝統画を学んだ。1830年以降は、テオドール・ルソー等とフォンテンブローやバルビゾン付近の森や田園風景を描き、バルビゾン派の七星の一人と称されている。

「人生の目的は風景画を描くこと」と決意しただけあって、自然を描いた作品が多い。初期の作風は古典的、優雅で細密な表現が際立つ。晩年はロマン的で詩情豊かな作風となった。パリの南東90キロ、人口4万の小さな古都を車で訪れた。遥か遠くから望むことが出来る大聖堂は、中世を偲ばせる風情がある。

シャルトルは、20数年前に訪れた情景とは一変して観光用駐車場が設置されていた。コローが描いた大聖堂は、正面からのオーソドックスな構図だ。しかし、後世になって軒並み建てられた土産店やレストランによって、同じ角度から大聖堂を眺めることは出来なくなった。ここにも現代社会の縮図が顔を覗かせていた。

文と写真:奥村森

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