12 Beatrice Douillet ベアトリス・ドゥイェ Ⅳ

幸子さん、チズちゃんと心ひとつにして

幸子さんとの繋がりを説明したので、本題から遠廻りしてしまった、話を戻そう。フランスのアーティスト、ベアトリス・ドゥイェ展を開催するに当たり、語学達者なチズちゃんが幸子さんとの間に入って、メールで詳細な打ち合わせを始めた。スポンサーも予算もない、頼りは我々の労力のみである。

交通費や告知ポスターを始め、ベアトリスの滞在費など含め、すべて自払だ。ベアトリスは、中国経由の安価なチケットを早速手配した。幸子さんと僕は、メディアに送信するニューズレター作成、それに添付する写真の撮影を開始した。すべて、自分たちの手で作りあげた展覧会だった。

展覧会場でベアトリスの制作実演もすることになり、チズちゃんは、日本ならではの布切れや相撲番付表などを集めるのに大忙し。ベアトリスは、事前に作品を段ボールにいっぱい入れて郵送、開催数日前に日本に届いた。

展覧会準備も一段落したので、広報活動に専念することにした。2012年頃は、Web広報も盛んになり始めたが、依然としてテレビ、ラジオ、雑誌、新聞など従来メディアの信頼性は高く、美術情報として欠かせない。杉並区松庵近辺の店、都内の美術館などにも、チラシを置いて貰おうと訪ねた。

Webと従来メディア広報は順調、朝日と産経新聞がベアトリス展を掲載してくれた。西荻窪や吉祥寺などの店頭にも、幸子さんの顔でパンフレットを置いてもらった。問題は美術館、一般ギャラリーで開催する展覧会には多くが非協力的。敷居が高く、どんなに作家の説明をしても聞く耳をもたない。

小さな美術館の学芸員は展覧会に足を運んでくれたが、大きな美術館はジャンル以外の作品には興味を示さない。ましてや民間のギャラリー、相手にしないのも当然なのか。フランスの美術館では学芸員と作家の距離が近く、どんな作品でも観て意見を述べる姿勢がある。羨ましい。

こんな美術館の現状を目の当たりにして、「作家が成長するには権威や流行に惑わされない、作品をみつめる確かな目が必要」と確信した。美術に関わるなら、真摯に創作する作家の役に立ちたい。その思いは幸子さんもチズちゃんも同じだった。そんな気もちがひとつになってベアトリス展に臨んだ。

文と写真:奧村森

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