25 エルヴィックとお姉さん

掃除も料理もお手伝いさんがしてくれるので、チズちゃんはする事がない。そこで、船のダンスパーティーで知り合った彼へ手紙を書く事にした。彼の名前はエルヴィック。英語で書くので時間がかかった。封筒に入れて住所を書き。ポストが何処にあるか分からないのでお父さんに投函をたのんだ。

お父さんはその住所を見るなり「この家はすぐ裏だから一緒に持ってゆこう」と言い出したの。たまたまその日は日曜日だったから、二人は手紙をもって石畳の道を彼のお姉さん宅へと向かった。そこはアパートメントの二階。ベルをならすと、元気な人の良さそうなおばさんが顔を出した。

お姉さんと聞いていたから、若い人を想像していた。そのお姉さんは、彼より16歳年上だという事が後でわかりビックリ。彼(エルヴィック)はリオで下船してあちらこちらを旅してから帰るらしい。お姉さんは「まだ、帰ってないのよ」と申し訳なさそうに話し、帰ったら必ず伝えると約束してくれた。

一週間あまりたってアパートメントのベルが鳴った。ドアの覗き穴を見ると、笑顔のエルヴィックがそこに居た。彼はチズちゃんを案内するために車で来ていたの。車は小さな赤いオンボロ車。彼は「オンボロ車でごめんね、そのうちましなのを手に入れるから」と言ったけど、動けば全然かまわない。

街全体を見渡せる丘に行こうということになり、ドライブしている途中でエンコ、この街は坂が多い街なので馬力の弱い車は登れない。あえなく初ドライブは残念な結果となった。それ以降、エルヴィックと彼のお姉さん家族との交流は、チズちゃんが日本に帰国するまで続いたわ。三毛猫タヌー

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