66 リオからの飛行

機内では、楽しいこともあった。ある日ブラジルのフットボールチームが搭乗してきた。機長の一声で主要選手は特別にファーストクラスに招かれた。食事のオードブルにカニの甲羅詰めが出された。美味しそうに中身を平らげて最後にカニの甲羅まで食べようとして乗務員に食べ方を尋ねた選手がいた。

食前には必ずメニューを全員に渡す。すると日本人のお客様がチズちゃんを呼び止め、そして「注文したいのですが、ピッツァをお願いします」と言う。チズちゃんは、お客様に「ピッツァはございません、このメニューに載っているお料理を全員にお持ちしますのでご安心下さい」と答えた。

飛行機が離着陸する時には乗務員が客室を周り、シートベルトのチェックをする。何時ものように「ベルトをお締め下さい」と言いながら客室をチェックして歩いていた。するとズボンのベルトを緩めていた男のお客様が「あっ」と言いながら慌てて自分のズボンのベルトをしめたのには笑ってしまった。

アメリカ人の知り合いは、会議のために年に数回リオにやってくる。街を歩くと、何処からともなくアイスクリームが靴の上に飛んでくる。すると素早く靴磨きの子供達が「汚れた靴をみがきませんか」とやってくる。腰をかがめて靴を研いてもらっている間に後ポケットに入れてある財布が消える。

すでに、リオで飛び始めて数カ月が経っていた。入社当初の話は、チズちゃんのような東京入社組はリオで2~3か月飛んで、ロスアンゼルス・ベースとなりロスと成田間を主にフライトする契約だった。でも、すでに5カ月たってもドナ・リリアンから何の音さたもなくチョット心配になっていた。

チズちゃんはたまたま永住権を持っていた。それで他の入社した人達とは別に一人だけ先にリオにやって来ていた。それで、きっと忘れられているに違いないと思い、チズちゃんはドナ・リリアンの所へ交渉に行った。結果、やっと許可が下り、ロスアンゼルスへ行けることになり安堵した。

ガレオン空港からVarigの二つの濃紺のスーツケースを持ってロスアンゼルスに向けて飛びたった。窓から下を見下ろすと、見慣れたブラジルの赤土の大地がどんどんと小さくなって行く。これで暫くはブラジルともお別れ。思いは、これから生活するロスアンゼルスのことで頭がいっぱい。三毛猫タヌー

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