108 チズちゃん、ロサンゼルス空港で働く

よく小説などで陰鬱な気分になると周りの世界が灰色に見えたという文章を読んだ事がある。まさしく、この頃、チズちゃんから見える景色は全てが灰色と化した。それこそ、何を見ても色のないモノクロームの世界そのものだった。本当にこんなことが起こるのだとチズちゃんは妙に実感した。

体力的にも精神的にも限界だった。その年はヴァリグ航空に入社してちょうど10年目の年だった。一応10年が区切りだと思っていたので止める決断をした。それを聞いた空港のスタッフが飛ぶのを止めるのならグランドスタッフとしてロスの空港で働かないかとチズちゃんに勧めてきた。

空港での仕事は渡りに船、生活費を稼がなければならない。一銭もテリーから貰う積りもない。彼も、その事は言い出さなかった。こうして次の仕事が決まり、長年勤めたヴァリグ航空を退職した。今までは一カ月に何度か仕事をするだけの生活だったが、今度は毎日仕事に出掛けるのは少し心配だった。

退職後一週間ほど休養をして、早速ロサンゼルス空港での仕事が始まった。東京への出発便が3便、リオへの便が3便と貨物便があった。東京への出発便は朝早い、飛行機が到着する2時間以上前からいろいろと準備がある。朝5時に起床してグレンデールから80キロ離れた空港を目指す。

朝6時頃、家を出発するがフリーウェイは大混雑。グレンデールから134ベンチュラFWYで西に向かい、その後405サンデイエゴFWYに乗り換え南へ、空港はサンタモニカを通り越したその先にある。405FWYはアメリカで最も混雑する悪名高きFWY、5車線がびっしりと車で埋まり亀の歩みとなる。

渋滞がなければベンチュラFWYから乗り換えた時点で空港までは20分程で到着するのだが、ラッシュアワーはとんでもなく時間がかかるので必要以上に家を早くでる必要がある。どうしても、一時間以上は掛かってしまう。

空港に着くと車を駐車して、今度は空港循環バスに乗り、やっと空港カウンターのあるトム・ブラッドリーの建物に到着。結構朝から疲れてしまう。やはり、毎日仕事をするのは大変なことだとつくづく思った。三毛猫タヌー

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