111 ドンちゃんとの出会い

チズちゃんはアメリカに来てから仕事で家をあけることが多かったので、動物は飼えないと諦めていた。結婚相手のテリーもあまり動物好きではなかった。ペットショップを出て歩いていると、さっきの上目遣いの犬のことが妙に気になった。

何故、その犬が気になったかと言うと、他の犬達は何百ドルと高値なのに、その犬だけが16ドルだった。店員に聞くと、この犬はラブラドールとプードルとのミックスで勿論血統書などない。加えてもう子犬ではなくなっているのも理由の一つだった。

友人は「ラブラドールとのミックスだったら、絶対に賢いから飼いなさいよ」としつこく勧めた。今は仕事をしていても毎日家に帰れるので、この灰色の人生を少しでも楽しくするためには良いかもしれないと思った。どうしようかと散々迷ったあげくにチズちゃんは、この犬を連れて帰ることにした。

その犬は、ちょっと怖がりで連れて帰ろうとするとブルブルと小刻みに震えた。とてもおとなしい犬で家に着くまでは暴れもせずに箱の中に座っていた。家では庭に放して飼う事にした。友人が使わなくなった犬小屋を持ってきてくれた。その犬をドンと名づけた。

名前の由来は、とてもビビリなので、少しでもドンと構えたギャング団のボスのような物怖じしない犬になって欲しいとの思いを込めてつけた。その日からドンちゃんはチズちゃんにとって人生最愛の四つ足パートナーとなった。早速スーパーに行ってドッグフードを買い、犬用食器もそろえた。

灰色だった人生に、かすかな光が見え始めた。このモフモフのブロンド犬のおかげで家での仕事が増え忙しくなり、離婚問題も心の隅っこに追いやることが出来た。そして「全てはケ・セラセラ(なるようにしかならない)」と考えられるようになった。

毎日仕事から帰るとドンちゃんは、尻尾をビュンビュンと回しながらチズちゃんを喜び一杯で迎えてくれた。何ひとつ文句も言わず何時もチズちゃんに寄り添ってくれるドンちゃんに救われた。隣人のシャーロンもドンを気にいり、旅行する時には預かると言ってくれた。三毛猫タヌー

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