112 ダメ弁護士と救いの神、友人Rさん

テリーとの別居生活は相変わらずで、チズちゃんは、宙ぶらりんの状態にいい加減嫌気がさしていた。早くきりをつけたかった。空港での仕事も忙しく、心の余裕のない毎日だった。

教会から紹介された弁護士は全然チズちゃんの意に沿ってくれる人ではなく、電話をかけても伝言を残してもコールバックしてくれない時もあった。一度チズちゃんは、その弁護士に「私が東洋人の女だと思っていい加減な対応をしているのではないの」と語気を強めて詰め寄った事があった。

ダメ弁護士は「もし、そう感じたのなら謝ります」と慇懃無礼に応えた。アメリカの弁護士は往々にして電話で話すだけでもチャージすることが多い。例えば、15分話したから150ドルと言った具合で、すぐに請求書が送られてくるのである。チズちゃんの貯金もどんどん減り心細くなってきた。

チズちゃんの場合は、特別ではないし子供もいない。簡単なはずだが何故か時間がかかっていた。おまけにどんなに遅くなってもテリーはお構いなし。彼は弁護士だから自分で書類を書けるので一銭も費用を払う必要がない。チズちゃんは非常に不利な立場なのだ。

そんな気もちが沈んだ時、以前フライトを一緒にしていた同僚から「イラン人の友人Rさんに会ってみないか」と電話があった。「きっと彼はチズちゃんに良いアドバイスをくれるよ」と言った。彼は日本で医者の学位を取り、シーダー・サイナイメディカルセンターで心臓外科医として働いていた。

Rさんについての話を日本にいる昔からの友人Tちゃんにすると、Tちゃんは「チズちゃん、本当にその人が日本の大学で学位をとったのか、その後、東京の病院で働いていたのが本当か調べてあげる。もしチズちゃんが騙されたりしたら大変だから」とTちゃんは探偵の様なことを言った。

Tちゃんのおかげて、Rさんは本当に日本で学位を取り、榊原記念病院で心臓外科医として働いていた事実が判明した。彼はイラン語、英語、日本語、フランス語それに中国語も話せた。会ってみると、物腰の柔らかなとても優しそうな人だった。日本語ももちろん流暢だった。

Rさんに今雇っている弁護士の話をすると、その弁護士と掛け合ってくれることになり、一緒に弁護士事務所まで行ってくれることになった。長時間かけて今までの不当な請求について交渉をしてくれた結果、弁護士から幾らかの返金があり、以前のような毎月数百ドルの不当な支払いはなくなった。

その後もRさんはチズちゃんの支えになって色々と助けてくれたが、残念ながら一年後、ハワイに住みたいとの理由でホノルルへ引っ越してしまった。Rさんのおかげで、これまでわだかまっていた気もちがスッキリとした。三毛猫タヌー

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