147 ドンちゃんの思い出

ドンちゃんとの思い出は山ほどある。チズちゃんが働いている間は裏庭のポーチに犬小屋を置いて、放し飼いにしていた。夕方まで、戻らないチズちゃんを待っていて、退屈と淋しさから2メートルもある塀を駆け上り、逃亡しては必ず近くの公園で遊んでいた。
隣家のシャーロンは自分が犬と猫を飼っていることもあり、何時もドンちゃんを気にして可愛がってくれていた。シャーロンはドクター・オフィスで働いていて、わりに早く帰宅していた。帰ると必ずドンちゃんが逃亡していないかをチェックしてくれた。
シャーロンは裏庭でドンちゃんがみつからない時には、わざわざ車で近くの公園までドンちゃんを連れ戻しに行ってくれたりもした。チズちゃんは何時もシャーロンに助けられていた。
ドンちゃんが頻繁に公園に向かって逃亡する経路には、広いレシーダ通りという道路があり、交通量が多いのでとても危険だ。もしもドンちゃんが車に轢かれてしまったらと思うと気がきではなかった。その事を2軒どなりのパピーに話すと、それなら牛や馬などに使う電気柵を設置するのはどうかという話になった。
チズちゃんは、その頃アメリカでは一番大きな量販店で誰でも知っているし何でも売っていると評判の『シアーズ・ローバック』というデパートに行った。「家畜用の電気柵がありますか」と聞いてみた。さすがシアーズ、店員は「ハイ、あります」と言って早速取り寄せてくれることになった。
一週間程して電気柵は届いた。早速パピーに知らせるとすぐにやって来てくれた。電気ボックスや電線が山のように届き家の塀の内側に電気柵が張り巡らされた。庭に出るとものものしい感じがした。これでやっと心配したドンちゃんの逃亡を止める事ができると、チズちゃんは安心した。通電するとカチッ、カチッと小さな音がした。
次の日、何時ものように朝早く仕事に出掛けて帰ってみると、なんとドンちゃんが庭に居ない。折角時間をかけて電気柵をたてたのに、どういうことだ。電気柵にチズちゃんは500ドルも払ったというのに。お先真っ暗だ。
その事をパピーに伝えると電気柵は動物の足が地面に着いていなければ通電しないのだそうだ。ドンちゃんは身体が小さいので電気柵に身体が触れても足が地面に着いていないので全然効果がないとの結論にたっした。
するとパピーが全然役に立たなかったので、この電気柵をシアーズに返して返金してもらったほうがいいという。チズちゃんは、「でももう電線もサイズに切ってしまっているからダメでしょ」と言うと、パピーは「全然心配ないよ」と応えた。
満足できない商品は返すのが当たり前と店に持って行ってくれ全額お金は戻ってきた。アメリカでは日本と違い、商品が気に入らなければ何も言わずに返金してくれるシステムがある。お陰で無駄な買い物をせずに済んだ。パピーのお陰だ。
でも、アメリカ人の中にはこの返金システムを悪用する輩もいて、例えば、クリスマス前にドレスやお揃いの靴までを買ってパーティーに参加、終わると次の日には「主人がこのドレスは君に似合っていないから」と言われたと平気で返品してくる、とんでもない人が居るらしい。三毛猫タヌー
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