160 ニノエおばあちゃんのこと

隣のおばあちゃんの名は、武井ニノエさん。もともとチズちゃんが鳥畑さん夫婦と知り合いになったのも、このニノエおばあちゃんを介してなのだ。それは、チズちゃんが、まだ飛行機で飛んでいた頃にさかのぼる。ロスから東京行きのフライトに時々乗ってくる、感じの良い日系アメリカ人夫婦がいた。
名は西尾シグとエスターといった。毎回フライトごとに話しているうちに友達になり、フライトとフライトの間の休みには彼らの家に遊びに行くまでになっていた。彼らの話によると一年に何度も東京に行っているのは、小金井に一人住まいをしているエスターの母親に会いに行っているからだとのこと。
フライトをしている頃から小金井のニノエおばあちゃんのところに出入りをしていたチズちゃんは、隣の住人だった鳥畑さん夫婦と知り合ったのである。チズちゃんは小さな時から、おじいちゃん、おばあちゃんとのふれあいがなかった。
チズちゃんの父方祖父母は、生れた時には亡くなっていた。母方祖父母は山形にいて、祖母は60歳代でチズちゃんが小学生の頃に亡くなっていた。祖父とは、転勤族家庭で育ったチズちゃんなので、会ったのは2度ぐらいしかなかった。
そんな理由でチズちゃんは祖父母との関わりが余りなく育ったせいか、おじいちゃん、おばあちゃんがいる人を羨ましく思っていた。それに、チズちゃんはなぜか小さなときにはおばあちゃんに好かれ人気者だった。一日中、おばあちゃんたちの家をまわってはお菓子をもらい可愛がられていた。
チズちゃんは一カ月に3回から3回半、ロサンゼルスと東京を往復していたから、西尾夫妻に頼まれて時々ニノエおばあちゃんの所を訪ねていた。一緒に買い物にいったり、食事をしたりして楽しんでいた。ある日ニノエおばあちゃんを訪ねると紙袋に入ったプレゼントを渡された。それは黄色のⅤネックのセーターだった。ニノエおばあちゃんは、わざわざチズちゃんのために買ってくれていたのだった。三毛猫タヌー
(重要)ここに掲載する記事、写真等は全て著作物です。著作権法に従って無断転載を禁止します。記事を利用される方はご連絡お願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA