フランス旅行顛末記 3

          Beatrice Douillet ベアトリス ドゥイエ

Beatrice Douillet ベアトリス・ドゥイエ

2011年5月14日、今日は10時に友人のBeatrice Douillet(ベアトリス・ドゥイエ)に会う。モントイユのアトリエを訪ねる約束をした。ベアトリスは画家、グラフィックデザイナー、コラージュ、エコアートをこなすマルチなアーティストだ。1998年、美術雑誌の取材中、偶然パリで出会った。
ホテルへの帰り道ブラブラ歩いていると全面ガラス張りのアトリエが目にとまった。中で女性が大きなキャンバスに向かい絵を描いていた。相棒は人見知りタイプなのだが、何故か外国に行くと突然お喋りに変身する。そのお陰でガラス窓の外からずうずうしくも話かけ取材をさせてもらうことに成功。
その頃からベアトリスは、捨てられたガラクタ、古着などを使ってエコアートも試みていた。友人のクロードも一緒にベアトリスに会ってみたいというので、クロードの家に寄ってから3人で訪ねることになった。8時に起床、アレジアにあるクロード宅に向かう。
待合せ時間の9時15分にバッチリ時間通りにアパート前に到着。パリのアパートは日本と違い鍵が何個も付いている。まず、外の分厚い大きな扉を開けなければならない。そのために入口に付いているコード番号ボタンを押さなくてはならない。セキュリティー保護のため、この暗証番号は時々変更される。
早速クロードが教えてくれたコード番号を押す。重い扉はビクともしない。何度押しても開かないので電話をかけてクロードを呼び出そうとした。フランスの公衆電話を使用するには電話用コインが必要なので 、Tabac(バーでタバコや切手などを販売するキヨスクのような店)で購入することにする。
遠方まで歩いてやっとTabacを見つけカードを買い、近くの公衆電話にかけ込む。時間がどんどんと過ぎて気がきではない。短気な私はだんだん腹が立ってきた。でも、電話をかけない事にはどうにもならない。
まずは、電話用コインを投入口に入れる。するとフランス語で録音された冷たい女の声で訳のわからないことをベラベラ喋る。その喋りが終わってダイヤルしてみるが全然つながらない。何度しても同じなので一層腹が立ってきた。
オペレーターの声を後で落ち着いて聞いてみると、まず、言語を選ばなければならない。説明していたのは「フランス語か英語かを選んで下さい、フランス語は1を英語は2を」と言っていたのである。選んでから、やっとダイヤルできるのである。
結果的に電話はつながらず、道を歩いている通行人に電話の使用法を尋ねてもラチがあかない。5月だというのに外はまだ寒く、今日は風が特に冷たい。この寒空、二人は外で立ちんぼをすることになった。
こんなことをしている間にベアトリスの約束時間10時は、とっくにすぎてしまった。クロードも私達が時間通り来なくても、まったく気にならないらしく窓から顔を出す気配もない。もうお手上げ状態、仕方がないのでアパートから誰か住人が出てくるのを待つことにした。
やっと住人がアパートから出てきたのは2時間も過ぎた頃だった。その住人はクロードの知り合いだったので、中に入れてもらうことができた。時間はもう12時、クロードは「あれっ、あの暗証番号で入れなかったのおかしいわね、ハッハッハ」と笑った。笑ってる場合ではない。
クロードに確認すると、くれた入口の暗証番号は変更前のものだった。数カ月単位で変更するという。ベアトリスに謝罪の電話を入れ、すぐにメトロの駅に3人で向かった。40分ほどでモントーユ地区の最寄り駅に着いた。
モントーユ地区は芸術家が多く住んでいて、駅を降りたとたんアフリカに迷い込んだのかと思うくらい、道を歩く人、商店の人、みんな黒人ばかりである。中にはアフリカの民族衣装をまとった人もいる。なんだかチョット緊張する。多分、このあたりは物価も安く生活しやすいのだろう。
モントーユ地区にちょと緊張した私達は、背中に背負っていたバッグを胸のところに持ち替えた。ベアトリスのアトリエは、駅からすぐのところにあった。以前と違って、今は一人でアトリエを借りていた。久しぶりに会ったベアトリスは以前と余りかわっていなかった。
私達は、ベアトリスと抱き合いフランス式にホッペにチュ、チュと二度キスをした。最後に会ったのが1998年だから、もう13年も経っているが、何故か時間をまったく感じさせなかった。アトリエの中はいろいろな創作材料でいっぱいだ。
ベアトリス アトリエの引出しには、色とりどりのビールの栓、ボタン、くぎ、豆など細々したものが整然と並べてある。絵具、ベンキ、筆、大工道具が所せましと置いてある。
ベアトリスと芸術論、ドイツでの個展、ボーイフレンドのことなど、カフェ・エクスプレッソを飲みながら4人は英語とフランス語チャンポンで喋り、時間はあっという間にすぎた。3時間程話して帰国するまでにもう一度会う約束をして別れた。

文:吉田千津子 写真:奥村森

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