長年使用していた携帯電話のバッテリーが弱り、充電できなくなったので買い換えることにした。店を訪ねると店員が「無料で音楽が聞けるOOサービスをオプションで付けましょう」と言う。私は「そんな機能は必要ない」と断った。電話やテレビで音楽を聴くのは邪道だと思っているからだ。
「電話は単なる通信機器だからいらない」と私が何度言っても、彼はしつこく引き下がらない。そして「3ヶ月間は無料ですから、必要がなければ3ヶ月後においで下されば契約解除できます」とスッポンのように食いついて放さない。
とうとう根負けして、その勧めに乗ってしまった。冷静に考えると、あの時もっと強行に断れば良かったと思うが後のまつり。3ヶ月経って店を訪ねると「2ヶ月間は無料とは言ったが、3ヶ月間とは言っていない」と嘘ぶく。請求書には、すでに料金が自動引き落としされている。
「これでは詐欺ではないか、たとえ小額だとしても嘘をついて客を騙すのはよくない」語気を強める。店員は「誤解を与えるような説明をして申し訳ない」とまるで私が理解力の足りない人間だといわんばかりである。
その嘘が証明されたのは、「私は忘れっぽいから、3ヶ月後に解約と書いておいて」と購入時に、彼から一筆書いてもらった領収書が残っていたからだ。それでも私の聞き間違いだと譲らない。その態度がますます癇にさわった。「はっきりした証拠があるのに非を認めない、こうなったら出る所にでましょう」。さすがの彼も「売り上げを伸ばすために嘘をついてしまった」と詫びた。
最近よく感じるのだが、自分の失敗を人のせいにする人が多い。「こんな事件を起こしたのは親のせいだ、こんな結果になったのはあの人のせいだ」と何でも他人の責任にして謝らない。そういう不届きものが、どんどんと増殖しているのが悲しい。
文:吉田千津子 写真:奥村森
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