8 ロスアンゼルス最新事情 コヨテに襲われたモニカの愛猫・マックス

             Los Angeles ロサンゼルス

2013年10月、ロスアンゼルスのサンタ・モニカに住む友人のモニカを訪ねた。いつもロスアンゼルス到着当日は、彼女の家に泊まらせてもらう。彼女の家に着くと何時も迎えに出てくる猫のマックスの姿が見えない。

「マックス!」と呼ぶと犬のようにトコトコと走って来るとても可愛い二毛猫だ。今日は天気が良いので散歩にでも行っているのかと思っていた。そうこうしていると、彼女が勤めから帰ってきて、早く夕食を食べに行こうと急かすので、ファミリーレストランに向かった。そこで、彼女は驚くべき話を始めたのである。

それは、私がロスアンゼルスに着く4日前の金曜日のことだ。マックスがコヨテに襲われて食べられてしまったのだという。「えっ~サンタ・モニカの町の中にコヨテなんかいるの」と叫んでしまった。

そういえば私は、ロスアンゼルス郊外のグレンデールに住んでいたことがあった。家は、観光名所のグリフィス・パークの裏側にあり、自然豊かな場所だった。ある朝、道路の真ん中を歩く茶色の犬を見つけた。すると隣のおじさんのパピィが、あれはコヨテだよ教えてくれたのを思い出した。ロスアンゼルスにはコヨテが出没する地域が多い。

モニカの家の近くには浄水場があり、そこにコヨテが群れで住んでいて、夜な夜な町におりて来ては近所の犬や猫を襲って食べてしまうらしい。サンタ・モニカでも多くのペットが犠牲になっているとのニュースを聞いていたモニカは、夜は絶対にマックスを外に出さないよう注意をしていたが、その時に限って朝早く外に出してしまったらしい。
その日は、御主人のメディカル・チェックの日で朝4時ごろ2人で起床、マックスも一緒に起きて外に出たがったので出したのだという。冬の4時はまだ暗い。マックスは毎朝早く起きて、7時頃に朝ご飯をねだるのが習慣だった。

しかし、その日は何時までたっても帰って来ない。さすがにモニカも心配になり、あちらこちら近所を捜しまわったが、ナシのつぶて。夜になってもマックスは姿を現さなかった。その夜、ご主人と一緒に迷い猫のビラを作って、翌日近所に配ることにした。

ビラを近所に配る前に、ヒューメイン・ソサエティー(捨てられたり、迷子になった犬や猫などを保護して、里親を探す施設)に出掛けてマックスが保護されていないかを調べる必要がある。2人は、そこを尋ねたがマックスの姿は無かった。その話を聞いていた1人の係員が「ところで、マックスの毛色は?」と尋ねた。

「白と茶の二毛猫です」と答えると、彼はちょっと口ごもったように「ちょっと待って下さい。昨日そんな猫を見かけたような・・・・」と話すのである。「見てみますか?」と彼らに聞いた。何か悪い予感がする二人は覚悟の上で確認する事にした。

係員が持って来たものを見たとたん、2人は息をのんだ。マックスが、尻尾と後ろ足だけの無残な変わり果てた姿と化していた。それはマックスに間違いなかった。係員の説明によると、前日友人宅の近所の人から連絡があり、庭に猫の身体の一部が落ちているから回収してくれとの依頼電話があったという。

モニカ夫妻には子供がなく、マックスを我が子のように可愛がっていたので家に帰って2人でオイオイ泣いてしまったそうだ。モニカは余りの悲しさで、マックスが使っていたものや、彼を思い出させるものはすべて次の日に捨ててしまったという。そのせいで、家の中にはマックスのものは何ひとつ無くなっていたのだった。

その話を聞いた夜、私も余りのショックで眠れず、ウトウトしてベッドの中で耳を澄ますと、遠くでコヨテの遠吠えが聞こえた。それはマックスが外に出た時間と同じ午前4時だった。

文:吉田千津子 写真:奥村森

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