天候は相変わらず晴れたり雨になったりの気まぐれ天気。昼食後、夕食用のパンとヨーグルトを確保する。ポルトガルは、土曜日は午後1時まで、日曜日は休みという店が多いので、買いそびれると絶食を余儀なくされ悲惨な目にあってしまうからだ。勿論、日本のように一日中開いている店などない。
丘の上のポウザーダ近くで、またもやノラ犬攻撃にあう。車のタイヤにかみつかんばかりに跳びかかる2匹の犬、私たちは立ち往生、それを良いことに犬めは車の前に陣取り座り込んだ。犬好きの奥村さんは、ひき殺したくないので困り果てている。
「ノラ犬だから可哀相だと思ってやったらいい気になって、ふとどき千万な奴め」と怒っている。私も犬好きだが、本当にひき殺してやりたくなった。10分ほどの立ち往生、やっと犬も根負けしたのか立ち去り無罪放免。ポウザーダに辿り着く。少し休憩を取って、再び取材開始。
ポウザーダ前の小さな美術館がターゲットだ。一階には歴史的な土人形を中心に展示してある。美術館の離れには、アルリンド、アルフォンソ兄弟の土人形のアトリエがある。今日は、アルフォンソが一人で仕事をしていた。彼は土人形一筋に16年のキャリアを誇る人形師だ。技術習得は、すべて独学でやって来たという。
彼は18世紀の古典的手法を継承して、絵具は自然から取れたアルミ、鉄、松ヤニなどを使う。人工の絵具と違って色あせしないのが特徴だ。アトリエの隅には、1×2メートルの材料として使う土を入れる囲いが作られ、中には栗色のきめ細かい粘土がいっぱい入っている。冬期は、寒さのため土を手に入れることが難しいので、夏期に兄弟2人で土と水を混ぜ合わせたものを足で踏んで十分にこね回して余分な水分を取り除く。それを、アトリエ内に保存して冬に備えるのだという。
アルフォンソの作品は、宗教とアレンテージョ地方の風俗をテーマにしている。アトリエの棚には、「イザベル王妃」「羊飼い」「麦刈りの女」などの完成した作品が飾ってある。素朴で温か味のある土人形だ。「ヨーロッパ各地でも展覧会を開催しているんですよ」と言って自慢げに新聞の掲載記事を見せてくれた。
しかし、こうした伝統芸術は若い人には好まれないようで、後継者もなく「自分たちで終わってしまうかもしれない」と彼は嘆く。若者が3Kの仕事を嫌い、カッコよいお金の儲かる仕事に魅力を感じるのは何処も同じらしい。
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