ベアトリス、ジルと一緒に来日
2016年9月、ベアトリスは再び観光目的で日本にやって来た。何とボーイフレンドを連れての来日である。ボーイフレンドの名はGilles(ジル) Chétanian、ベアトリスより数歳年下で映画とアニメが大好きな優しいフランス人である。二人揃って宝塚の我が家を訪れ3日間滞在した。
宝塚には手塚治虫記念館がある。ジルのたっての願いで訪ねた。ジルは、フランスの映画館で働いていることもあってか、映画やアニメ情報は日本人よりはるかに詳しい。記念館で日本語解説が流れると、直ぐに携帯で録音をする。そして、翻訳機能を使いフランス語に訳す。
ベアトリスはジルの影響だろうか、以前に比べるとはるかにパソコンやiPhoneを駆使するようになっていた。僕も同様である。互いに文明の利器を情報拡散とコミュニケーションツールとして生かし、思考はあくまでも人間性を重視してデジタルとアナログの融合をめざす方向に歩んでいた。
ベアトリスとジルを外国人に人気があるといわれる有馬温泉に案内した。僕たちの会話は、英語とフランス語のチャンポン、日常のコミュニケーションには問題がない。温泉カウンターでチケットを求めると、マネージャーとおぼしき男が、僕を無視してベアトリスとジルに向かって突然話し掛けた。
温泉受付の男は自信たっぷりに英語で話すが、英語苦手なベアトリスは勿論、得意なジルまでもが理解できず「Yuki、何言っているのかわからない、日本語で訊いてくれ」と困り顔。「日本語で説明してもらえますか」と男に伝えると、「難しい注意事項だから貴方の英語力では無理」と失礼な事を言う。
男の発言にムカッとなったが、笑顔で聞き流した。ベアトリスとジルが知れば気を悪くすると思ったからだ。彼の言いたい事は「入れ墨お断り、入ったら罰金」という注意だった。温泉を出ると「ご意見お聞かせ下さい」というアンケート用紙が置いてあった。勿論、それには起きた事を詳細に記した。
男は、英語マニュアルを暗記して棒読みしていた。英語検定上位級数を取得しているのだろうが、生きた英語ではなかった。恐らく、中国系の観光客が団体で訪れていたから、少数客をバカにしていたに違いない。コロナ禍で外国人顧客は激減、今やっと地元客の大切さに気づいた事だろう。
ベアトリスとジルは二日間宝塚に滞在、その後、香川県の直島、大分県の別府温泉を訪れ、それから東京の幸子さん宅に泊まり、東京観光をして、無事成田からフランスに帰国した。二人は我々の接待がよほど嬉しかったのか、「幸子さん、Susie,Yuki3人でパリに来て欲しい」と言った。
文と写真:奧村森
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