16 雄鶏のモーリス君の勝利

                Nov.4 2019

フランス西部にあるオレロン島のサンピエール・ド・オレロンで事件は起きた。夜明けを告げるニワトリの鳴き声が、うるさくて眠れないと主張する住民が訴訟を起こしたのだ。

原告は最近、この地に別荘を取得、その隣に渦中の雄鶏のモーリス君が住んでいた。彼らの言い分は、「毎朝4時ごろからモーリスの鳴き声がうるさくて眠れない」というものだった。

それを確かめるため、県は職員を派遣しモーリスの鳴く時間と鳴き声の大きさを3日間に渡り調査した。その結果、モーリスは6時半から7時の間に断続的に鳴き、声は窓を閉めておけば、決してうるさいとは言えない音量だった。

その結果裁判所は「モーリス」には鳴く権利ありと認める判決を下した。そして原告には1千ユーロをモーリスの飼い主に賠償金として支払いを命じた。

モーリスの裁判が注目を集めた理由は、雄鶏がフランスの国鳥でもあることも一つだ。
ラテン語の「Gallus」は雄鶏とガリア人との二つの意味があり、そこからガリアがガリア人とのシンボルとなった。雄鶏はフランスのシンボル、サッカーチームのユニフォームの胸にも雄鶏のマークがあることをご存じだと思う。

多くの人たちが原告夫婦の訴えを昔から地方に根付く音や暮らしに対する攻撃ととらえている点もあげられる。カジュアルな暮らしを好む新上流階級「ボボス」ブルジョア・ボヘミアンズと田舎の住民との対立に単純化すべきではないと市長は苦言を呈する。
今日はニワトリだが、次はカモメの鳴き声や風の音、あげくは我々の訛りが攻撃のまとになりかねない。

最近問題になっているフランスでの都市と地方の住民間に広がる経済格差、大統領マクロンへの政策抗議「ジレ・ジョーヌ」(黄色いベスト運動)も核心とする問題だ。モーリスもフェイスブックの公式ページで黄色ベストを着た写真を公開している。

文:吉田千津子 写真:奧村森

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