110 野良ヤギを飼う

チズちゃんも家族も大の動物好き、犬も猫も好きだった。子供の頃から何時も犬や猫が家にいた。どの犬猫も何時も近所に捨てられていた子を拾って飼っていた。3人兄弟だったので、それぞれが次々に拾ってくるのでお母さんは閉口していた。一度、弟が捨てられたヤギを連れて来たこともあった。

この野良ヤギの後日談である。この子ヤギはいつも遊んでいる広場に行くと草をはんでいた。子供達はヤギの持ち主を探したが、周りにそれらしい人はいなかった。仕方なくチズちゃんの弟は、家に連れて帰る事にした。それを見たお母さんはビックリして「今度はヤギなの?」と呆れてしまった。

家の庭は広かったからヤギには十分な広さだった。この頃、チズちゃんの下の弟は幼稚園に通っていて、ある朝どうしてもヤギと一緒に幼稚園に行くと言い出した。お母さんは「幼稚園には連れていけないのよ」と言っても聞かず、とうとう幼稚園に一緒に行ってしまった。

子ヤギは子供達に大人気となり、弟は毎日、ヤギに紐をつけて一緒に通園するようになった。どうして園の先生が何も言わずにヤギと通園することを許したのかは今思えば、その幼稚園がお父さんの会社の直轄幼稚園だったので忖度してくれていたのかも知れないと思っている。

チズちゃんの家には落花生畑があって、そこには青々とした緑の葉が茂っていた。それをこのヤギはバリバリと美味しそうに食べて、あっという間に坊主になった。何時もは広場で草を食べさせていた。ヤギは成長してだんだんと大きくなり、頭には角が生え始め一年もすると力も強くなった。

ヤギに頭突きをされると小さな子供は弾き飛ばされ、ひとたまりもなかった。危ないのでもう一緒には幼稚園には連れて行けなくなった。これを見ていたお母さんが何とかしなければと近所の人に相談したらしい。

ある日、家に帰ってみるとそのヤギの姿が忽然と消えていた。何度子供達がヤギを何処にやったのと聞いてもお母さんは一切教えてくれなかった。後に聞いた話では大学の研究室に寄付したとのことだった。その時チズちゃんと弟二人は悲しくて、大人は何て残酷なことをする人達なのだろうと呪った。

チズちゃんと二人の弟は、犬猫を拾って来るたびにお母さんに「本当に自分でお世話できるの」と文句を言われながらも、飼うのを渋々許してもらっていたが、結局はお母さんが餌の世話をしていた。三毛猫タヌー

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