138 訴訟大国アメリカ


アメリカは訴訟大国、訴訟が大好きな国民だ。カリフォルニアには弁護士が日本の23倍もいると聞いた事がある。ジョークに、車の事故が起きると、その後を数人の弁護士が走ってついてくるという話。子供が両親を訴えた話、それは両親が自分の嫌いな野菜を無理矢理食べさせるからとの理由だった。信じられないような本当の話だ。
最近、日本でも子供が登校や下校中に行方不明になる事件が多発している。比較的安全といわれる日本では集団登校、学校が近いと一人で登校するのが当たり前となっている。しかし、アメリカでは決して1人で登校させたりはしない。親が送迎する義務があるからだ。
それだけ世の中が危険に晒されているという事だ。だからアメリカで子を持つ親は大変。スクールバスがある学校はバス乗り場まで連れて行けばよいが、ない学校に子供を通わせる親は苦労が多い。ましてや、子沢山の家では近所の親同士が輪番制で助け合って子供の送迎をこなしている。
子供だけの留守番も、ある年齢になるまでは許されない。短時間だからとお母さんが子供を家で待たせておくのは御法度。親が出掛ける時には必ず大人が一緒に居る必要があるのでベビーシッターを雇う。通常、高校生や大学生がベビーシッターとしてパートで働いている。
それに比べると日本はまだ、親が子供だけで留守番させているのを良く見かける。最近は日本でも市町村によっては子供だけで登校させたり、留守番をさせるのが子供虐待に相当するというニュースが放映されていた。日本もだんだんアメリカのように子供にとっては安全ではない世の中になりつつあるのかもしれない。
チズちゃんはロサンゼルスに20数年間住んでいる間に、車の事故に3度遭った。1度目と2度目は信号待ちをしていて、後ろから突然追突された。幸いにもむち打ち症にもならずに済んだが、3度目はそうはいかなかった。
ウエストウッドのオフィスに通勤途中、サンセット、ストリップを通りベルエアの森の中を抜けてご機嫌で鼻歌交じりで走っていた。すると突然、信号のない右の側道から中型の白いトラックがチズちゃんの車目掛けて追突したのだ。勿論チズちゃん側の信号は青。追突された衝撃でパニックになった。
ウエストウッドに向かう道路は、交通量が少なく人通りも余りない。チズちゃんの車は事故の衝撃で道の真ん中で動かなくなってしまった。右側から追突されたのでドアもへこんで開かなくなっていたが、幸いにも運転席側は開けられたので慌てて外に出た。ぶつかって来たトラックの運転手も出てきた。
ぶつかってきた相手は30代ぐらいの痩せ型の白人の男で、酷く怒っていた。怒りたいのはこっちの方だとチズちゃんは思った。しかも青で走行していたのにぶつけられた。ぶつけた男が申し訳なさそうな顔でもしているかと思いきや。その男の第一声が「もし、銃を持っていたらお前を撃ち殺してやる」と言い放ったのだ。
さすがのチズちゃんも怖くなった。もちろんぶつかったトラックに落ち度があるがアメリカ人だから絶対に謝らないことは分かっている。恐怖におののきながら事故になった時に必要な、お互いの運転免許をみせてライセンス番号、名前、住所をチェックした。
その頃は、まだ携帯がないので警察に連絡しようと思っても術がない。辺りに公衆電話も見当たらない。そこに通り掛かった親切な人が警察とチズちゃんのオフィスに事故のことを連絡してくれたので助かった。警察の聴取も終わり30分ぐらいして、オフィスの同僚のジョンが迎えに来てくれ一段落した。
一段落したら急に怒りが込みあげてきた。絶対にあのトラック野郎をやっつけなくては気が済まない。こちらが青で走っていたのに藪から棒に横からぶつかったのにも関わらず横柄な態度と脅迫的言葉に怒りがおさまらない。早速友人の弁護士レオン・ラウファーに電話をした。
すると、弁護士のレオンは「まかしておいて、きっと君の思い通りにしてあげるから」と言ってくれた。全てを彼にまかせることにした。事故の説明とぶつかった時に男がチズちゃんに言い放った脅迫の言葉もすべて話した。
そして、チズちゃんはレオンの勧める交通事故専門医師のところでむち打ち症の治療をすることになった。約一カ月、治療に通った。相手は業務使用の会社の車だったので、保険は会社が治療費や車の修理代を全額支払うことになった。
この事故には後日談がある。幸いにも、むち打ち症も軽かったので一カ月ほどして治療を終了することにした。仕事中に治療に通わなければいけなかったのも気が引けていた。ところが医者は、もう一カ月治療に通うように強く勧めたのだ。チズちゃんはもう痛くないので必要はないと断った。
すると医者は、もう一カ月追加治療した方が良いと言う。保険金が多く出るからだとチズちゃんに強く勧めたのだった。チズちゃんは脅迫的言葉を吐いて脅かしたトラック運転手を、こっぴどくやっつけたいとは思ったが嘘をついてまでもするのは、チズちゃんの良心が許さない。医者は仕方なくチズちゃんの考えに従った。三毛猫タヌー
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