126 ガードナーのジョージ現る


若先生は検眼専門医で、大先生の榊原先生は眼科医で白内障などの手術をしていた。規模は以前に勤めた眼科よりも大きく事務員も沢山いた。仕事内容は、どちらも同じで特別新しいことはなかった。ある日、受付にいると何処かで見かけたことのある男性患者がやってきた。
何処でみかけたのかが直ぐに判らなかったが、彼の診察券を見てチズちゃんはすぐに思い出した。彼の名前はジョージ、以前我が家のガードナー(庭師)をしていたジョージだった。彼はある日突然、何の知らせもなく仕事に来なくなったのである。
世間は狭いものだ。当時、ジョージは隣のパピーとチズちゃんの家の芝生を刈り、レモンの木や薔薇を剪定したりしていたが、連絡なしに突然来なくなったので病気ではないかと心配になり電話をしたことがあった。分かったことは特に病気でもなく、ただただ、もう辞たいの一点張りだった。
その後、日系の新聞にジョージが小切手を掲げて満面の笑みを浮かべ写っている写真を見て、やっと理由が判ったのである。その理由は以前にも書いたが、ジョージはラスベガスで16万ドルのジャックポット(大当たり)を出したからだった。
その事件以後、ジョージの顔は見ていなかった。チズちゃんは、この時とばかりにジョージにあの時の気持ちを爆発させた。何時も仕事は時間厳守で休む時は必ず連絡してくれていたのに、何故無断で辞めてしまったのか、辞めるなら辞めるとせめて一言って欲しかった。
仕事を急にやめられたので隣に住むパピーもチズちゃんも新しいガードナーを見つけるのが大変だった事をジョージにぶちまけた。彼はバツが悪そうに黙り込んでいた。もう終わった事だとは思いながらも、信頼していた人に裏切られたのは残念でならなかった。でも、チズちゃんの気分はスッキリとした。三毛猫タヌー
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