141 不思議な体験

チズちゃんは子供の頃から色んな不思議な体験をしている。一番古い体験は中学生の頃だ。早朝、玄関の屋根でうちわで扇ぐようなパタパタパタという音が絶え間なく聞こえた。
外に出て屋根を調べても何もない。家の中に入ると、その音は相変わらず聞こえる。次の日の朝に電報が届いた。チズちゃんのおじちゃんが亡くなったとの知らせだった。丁度、パタパタと音がした時間に亡くなったのだった。きっと、山形からおじいちゃんが別れの挨拶にやって来たに違いないとチズちゃんは思った。
チズちゃんが海外に住み始めると、それは頻繁に感じるようになった。たとえばブラジルに住んでいる時には日本に居るお母さんからの手紙が時々届く。「あっ、今日は手紙がくるな」と思うと必ず郵便受けにおかあさんからの手紙が入っていた。
昔、実家で長年飼っていた白い大きな犬がいた。名前をカピといった。カピはとてもやさしくおっとりとした犬で、子ども達が大好きだった。昔の犬のごはんは、今のようなバランスのとれたドッグフードと違い、家人の残したおかずやご飯に味噌汁などをかけた質素なものを食べていたが、病気もせずに元気だった。
カピは、そうとうな歳になっていた。ブラジルに住んでいたチズちゃんは長らくカピの事を忘れていた。ある夜、久しぶりにカピの夢をみた。夢の中でカピは元気に走り回っていたが、急に胸騒ぎがした。次の日、お母さんから手紙が来た。カピが老衰で死んだとの知らせだった。
航空会社で働きはじめてからも、こんなことがあった。一緒に働いているパーサーは皆が忙しくしていてもシートに腰掛けて新聞を読んだり食事をしたりして全然動こうとしない。他のクルーも苦々しく思っていたが誰も何も言わない。とうとうチズちゃんは我慢できずに彼にいった。「どうぞ、そこに座っていて下さい。私がサービスを全部しますから」と。
パーサーは、相変わらず何もしなかった。チズちゃんは、この人とは一緒に働きたくないと思った。同時に早く、この人がロサンゼルス・ベースからブラジルのリオ・ベースになりますようにと心のなかで強く祈った。すると数週間後に彼は、フライト中に気分が悪くなり東京に到着後、病院に運び込まれた。診断は膵臓の病だった。そして、治療の為にリオに帰国させられた。
チズちゃんの家には、何時も犬や猫がいた。それは近所に捨てられていた猫や犬を子ども達が拾ってくるからだ。チズちゃんのお父さんは転勤族だったから、その時は愛知県の安城市の社宅に住んでいた。家にはクロと白のぶちの猫を飼っていた。ある日、家族皆ででかけて帰ってみると猫がお腹をパンパンにして苦しんでいる。
苦しんでいる猫のまわりを見回すと、大きなガラス瓶の蓋が取れていて、入っていた干イカが半分ほどなくなっていた。きっと猫が食べたにちがいない。子供達は猫のお腹をさすったり、吐かせようとしたが後のまつりどうしようもない。薬も飲ませようとしたがダメだった。夜だったので獣医さんも間に合わず可哀そうに猫は死んでしまった。庭に穴を掘ってお墓を作った。
それから数週間して台風が来た。その夜は暴風雨で窓ガラスがガタガタとなっていた。ふとチズちゃんは数週間前に死んでしまった猫の事を思い出した。その猫の生まれ変わりが今日やって来るような感覚にとらわれた。その時、すりガラスの向う側に何か小さな生き物がスーと通った。
チズちゃんはゾクッとした。そして慌てて窓を開けた。みると白と黒のずぶ濡れの子猫だった。何処からこの嵐の中、チズちゃんの家にやってきたのだろうか。すぐにその猫を家に入れ、飼うことにした。きっとこの子猫は数週間前に死んでしまった猫の生まれ変わりに違いないとチズちゃんは思った。三毛猫タヌー
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