123 眼科医Nで働く


離婚が成立するまでの2年間は水彩画を描いたり、グレンデール・カレッジで英語、ドイツ語、スペイン語、UCLAのエクステンションではグラフィック・デザインの勉強をしていたが、チズちゃんはいよいよ本格的に仕事を探す必要に迫られて来た。
水彩画を教えてくれる菊池さんが購読しているロス発行の日本語と英語の新聞『羅府新報』を何時ものように読んでいると、求人欄に目がとまった。そこには「ダウンタウン・リトル東京のオフィスでスペイン語と英語の通訳求む」と書いてあったので早速連絡してみることにした。
雇用先に電話をしてみると、日系人眼科医のメディカル・オフィスだった。リトル東京はロスにある日本人街で、日本食レストランや日系人の店が沢山立ち並んでいる。ダウンタウンにはメキシコ人街、中華街もあり国際色豊かな地区である。
面接後早速チズちゃんは、そこで働く事になった。仕事はスペイン語の通訳と事務。白いユニフォームを着ると、まるで看護師の様だ。外からみると、ただの事務員なのに看護師に見える。事務員はチズちゃんを入れて3人とイギリス人のオフィスマネージャー、先生は日系アメリカ人の眼科医Nである。
仕事は朝の9時から始まる。毎日患者さんが次々とやってくる。大体は日系アメリカ人2世、それに日本から若い時にやってきた一世の人達も交じっている。時々メキシコ人もやってくる。チズちゃんたちは視力検査もするし、先生のアシスタントもする。
シニアの患者さんが多いので白内障の手術の診察や術後のチェック、目の瞳孔を開く検査も多いので、検査後にはメガネの上からかけられる簡易サングラスを忘れないように渡したり、仕事は山ほどある。一日中座るヒマもなく立ちっぱなしなので家に帰るとグッタリと疲れる。
働く環境は3人の事務員の仲がよかったので最高だった。一つだけ問題があるとすればイギリス人のオフィスマネージャーの、その日の気分だ。日によるのだがルンルンの時もあれば、朝からわめきちらすこともあり、チズちゃんたち事務員3人は彼女のご機嫌を伺いながらのヒヤヒヤの毎日だった。
オフィスマネージャーはイギリス人のシングルマザーでとても気分屋。機嫌のよい日は良いが、機嫌の悪い日などは一日中ヒステリー気味で患者さんを扱うよりも気を使う。時々一日の経理の計算が合わなくなったりすると最悪だ。そんな時、チズちゃんは何処が間違ったのかを調べる係を買ってでた。
複雑な計算でもないので何処が間違っていたかが判ると、やっとオフィスを閉めて帰ることが出来る。オフィスマネージャーは、時々間違っている計算をチズちゃんに見つけて修正してもらえるので、チズちゃんは一目置かれるようになった。
オフィスマネージャーには子供が二人いて、きっと家では色んな雑用に追われストレスが溜まっているに違いない。それで時々爆発してしまうのではないかと、チズちゃん達は想像した。女手一つで子供を育てるのは容易ではない。チズちゃんは子供が居なくて良かったとつくづく思った。三毛猫タヌー
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