124 チズちゃん車上荒らしに遭う


ドクターオフィスはダウンタウンにあったが、すぐそばにはスキッドローがあり路上生活者やホームレスの人達がたくさんたむろしていた。通勤は自家用車だからオフィスで決められた駐車場に車をとめて一日働くのだが、ある日仕事が終わり車に戻ると三角窓が割られていた。
アメリカでは、車を離れる時には絶対に物を車中に置いたままにしてはならないと口を酸っぱくして言われている。チズちゃんは、それを何時も守っていた。ところが数カ月前にもグレンデールの街中で真昼間に不覚にもラジオを盗まれてしまった。
盗まれたラジオは、ドイツ製のブラウプンクトというブランドで車を買った時に一緒に付いてきた。初めてラジオが盗まれた時、友人にラジオ盗難の話をした。ラジオがあった場所には穴ぼこが空いている。その事を知った友人が「丁度いいものがあるわ」と印刷したラジオのパンフレットをくれた。
友人いわく「盗まれた穴ぼこに、このパンフレットをキレイに切り抜いてはめておけば見栄えもいいからそうすれば」という勧めで、その穴をパンフレットで塞いでおいたのが凶と出た。車上荒らしは、そのパンフレットを見て本物だと思いこみ、三角窓を割って盗もうとしたのだった。
車上荒らしはラジオをよくよく見てみると、それはただの紙のラジオだったので怒り、それを後部座席に投げ捨て逃げ去った。その駐車場はビルの谷間にあり、日中でも薄暗く本当のラジオと見間違えたらしい。二度も三角窓を割られたチズちゃんは激怒したが後の祭り、三角窓修理代は90ドルだった。三毛猫タヌー
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