136 五十年来の友人、未明

今も付き合っている人といえば未明がいる。彼はVarig航空時代に一緒に働いた同僚。大学卒業後、友人がブラジルに行ったのを機に自分も行こうとオランダ船ルイス号に乗りアフリカ経由でブラジルのサントスを目指した。この時代は若者が海外に憧れ、バックパックを担いで海外に行くのが夢だった。

未明がブラジルに着いても直ぐには仕事はなかった。ある日ブラジル日系新聞で仕事欄を見た。その当時のブラジルでは一番待遇の良いとされていた石川島播磨重工業のブラジル法人・Ishikawajima do Brasilに幸運にも就職できた。会社はリオにあり働き始めて間もなく、こんなオファーがあった。

ある日、友人のドイツ人の妻が、姉のために日本語の先生を探していると聞き、未明が教えることになった。そのお姉さんがたまたまVarig航空の重役の秘書をしており、今度日本にVarig航空が初めて就航することになり、働いてみる気はないかと打診されVarig航空に入社した経緯がある。

未明と初めて出会ったのは、東京の常宿・銀座第一ホテルでフライトの準備をしている所に一人の日本人の乗務員がドアをノックした。彼の名前は未明と書いてミアキと読む。第一印象は物腰柔らかく、日焼けしてハンサム。ハワイ育ちの日系人かと思うほど今までに会ったことのない日本人だった。

未明がロスベースになったのは、リオ、東京間のフライトが就航して間もなくの頃だった。未明の奥さんは、東京バレー団でプリマを務めた人、その筋ではちょっと名の知られたバレリーナ。何時も背中をシャンと伸ばし姿勢のとても良い綺麗な人だった。

ロスでは未明が近所に住んでいたので、何かあれば何時も未明の家に他の乗組員と押しかけて、ご馳走になっていた。未明と奥さんのマリ子さんは料理上手で、手早く美味しいものを作ってくれた。女の子達は未明の事を「Homen de confianca」(信頼できる男)と呼んでいてアイドル的存在だった。

何故、未明が「Homen de confianca」(信頼できる男)と呼ばれるようになったかと言うと、ブラジルの男は情熱的で直ぐに手を出すので要注意。その点未明はとても紳士的で一緒に出掛けてもそんな心配がないのでクルーの女の子達には大人気。東京に着くと未明と一緒に食事に行きたがった。

後に未明は、成田空港のVarig航空のステーション・マネージャーとなった。飛行機の離着陸やフライト全般の仕事をした。彼が空港のボスなのでチズちゃんが休暇をとって、乗客として搭乗する時にはVIPルームに招待された。

未明のお陰で何時も、ビジネスクラスかファーストクラスにアップグレードしてもらい優雅に旅を満喫できた。しかし、そのVarig航空も2005年経営陣の放漫経営で倒産した。

ヴァリグ・ブラジル航空は、2006年に日本への乗り入れ撤退を余儀なくされたので、残念ながら今は以前のようなアップグレードの特権にはあずかれない。昔、栄華を極めたものも時代と共に変化して行くのは寂しい。三毛猫タヌー

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