80 チズちゃんのブラックマジック

フライトをしていると、気の合う乗務員ばかりではない。エコノミークラスでは男二人、女二人が一緒に働くがクルーは何時も同じメンバーではない。フライト毎に変わる。ロス・ベースには4組のクルーが居たから、4度に一度は同じ人と勤務する事となる。

チズちゃんの一番苦手なぐうたらチーフは、エコノミークラスの中ではボスだから威張っていた。機内に入るとまず食事数、飲物、非常口、救命胴衣のチェックなど、する事は山ほどある。所が彼はまず、ゆっくりと座席に座り、新聞を読みくつろぎモード。皆バタバタと忙しく働いていてもお構いなし。

挙句の果て、乗客の食事サービスが始まると、彼は乗客よりも先に食事をする始末。皆、苦々しく思っていても誰も彼の首に鈴をつける人はいない。チズちゃんは何度もこれを見ていたから、とうとう、その日堪忍袋の緒が切れてしまった。そしてチズちゃんは彼に一言言った。

「チーフどうぞ食事をゆっくり召し上がって下さい、ずっと座っていても結構です」彼は少し驚いたが余り気にもしてない様子。彼と一緒にフライトするたびにチズちゃんの前頭部に異変が起き小さなハゲが出来た。初めは眉墨で隠せたが、それはどんどんと大きくなり、とうとう500円玉大になった。

緊急事態発生、それ迄は眉墨で隠せていたが、もう500円玉大のハゲは隠せない。仕方なく日本でショートカットのカツラを買い、フライトのたびに被ることにした。チズちゃんはチーフがリオに早く帰ることだけを願っていた。すると2ケ月後、彼は東京滞在中突然、急性膵臓炎になり病院に担ぎ込まれた。

大願成就、チズちゃんの祈りが叶ったのだ。チズちゃんは嫌な奴が居ると心でその人がチズちゃんの前から居なくなるように何時も願をかける。すると大概はそのようになる気がする。勿論彼は至急リオに戻され二度とロスには現れなかった。そして、チズちゃんにやっと平和な日々が戻ることとなった。

チズちゃんは嫌いな人が居ると「いなくなりますようにと願をかける」と同僚たちに話をすると、ブラックマジックだと言った。ブラジルには色んなブラックマジックがあり、街角の隅に蝋燭を灯し、供え物をする。日本では藁人形が有名だ。同僚たちは、チズちゃんに嫌われないようにしないとねと言った。三毛猫タヌー

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