93 グレンデールで初めて買った我が家

グレンデール市は、カルフォルニア州南部ロサンゼルス郡にある。ロサンゼルス中心部から北へ15キロの所にある。人口は約19万人、ロサンゼルス、ロングビーチについで3番目に人口が多い。日本でも知られているネスレの米国本部やIHOP(International house of pancakes)の本部もある。
グレンデールの発展に貢献したレズリー・コムズ・ブランドの豪邸は、ブランド・ライブラリーとして今も残っている。ヤシの木が両側に植えられた坂道を登ると真っ白な瀟洒な建物がそれである。川沿いにはGlendale Equestrian Center(乗馬センター)もあり、週末には色々なイベントも開催される。
グレンデールの家は1935年に建てられた典型的なカルフォルニアンスタイルの平屋。間取りは暖炉付きのリビング、2寝室、デン(テレビをみたりする娯楽室)食堂、サービスポーチ(洗濯機や乾燥機を置く部屋)、台所とポーチだ。敷地は200坪で庭にはレモンの木とバーベキューコンロがあった。
家を購入するにはデポジットが必要だ。そして、その家の持ち主にオファーを入れる。普通は言い値では買わず、いくらか値下げしてもらう交渉をする。売値はちょっと高く設定をしているからだ。チズちゃんの物件オーナーは定年退職をしたばかりで、故郷のモンタナ州にUターンする夫婦だった。
売り手の夫婦からカウンターオファー、交渉は全て上手く行き、チズちゃんはローンを取り付けるため銀行に行った。ローンも問題なくおりて、いままで支払っていたアパート賃貸料よりも、ほんの少しだけ高くなったが、二人の仕事に何か支障があっても、支払いに困らない程度に35年払いに設定した。
頭金はチズちゃんの両親から少し借金し、少しずつ返済する事にした。家は前の持ち主が住んだままだったので、新しいカーベットにして壁もキレイに塗りなおす必要がある。ダイニングとデンの間には窓がついていたらしく、今は大きな3つの穴ぼこになっている。ここもシャッターで塞ぐことにした。
せめて、カーベットと壁は入居前にきれいにしておかないと家具が入った後では、移動が大変になるので引っ越し前にしておく必要がある。家を買ってからは、チズちゃんはフライトから帰るたびにアパートからグレンデールを往復した。少しずつ荷物を運びながら壁塗りを始めた。
DIYの店からペンキ、ブラシ、ニスなどを買い込んで内部の壁塗りが始まった。壁のペンキは水性なので洗えばとれるが、木の部分は油性ペンキで塗るので髪についたらとれないので閉口した。古い家は天井の各コーナーが木製で出来ていて、そこは油性のペンキを塗る必要がある。
家の壁塗りをして疲れたが、よい事もあった。フライトをして帰ると何時も肩が凝って痛かったのが、壁塗りをするのに腕を上下左右に動かすので、肩の調子がいつになく良くなった。週末はテリーも手伝ってくれたが、平日にはチズちゃんは一人で、もくもくと壁塗りに明け暮れた。
家具は友人Fさんの紹介でダウンタウンにある家具の卸屋ばかり集まる大きなファニチャーセンターに行き、チズちゃん達の気に入った家具を木材や色を選んでチャイナキャビネット、ダイニングセット、ウィングチェアを特注で注文したので全ての家具が揃うのに一年以上も掛かった。
チズちゃんは、家具は一生物だと思い作らせたので、それ以後一度も家具を買い替えたこともなく、40年以上たった今も、それらの家具は健在で、使い続けている。一つだけ困るのは木製の家具はどれも重くて一人では動かすことが出来ないのがたまにキズだ。
壁も塗り終わり新しいカーペットも入れ、いよいよ新居に引越しだ。今までのNormandieのアパートは家具付だったので運ばなくてはならない家具は何一つなく、二人の洋服と台所用品、身の周り品を箱に詰め込み何度か新しい家とアパートを往復すると業者をたのむことなく引越は終わった。
チズちゃんにとって初めての自分の家だったので、とても嬉しかった。アメリカ人は室内で靴を履いたまま生活するが、チズちゃんの家は日本式。アメリカ人が来ても靴を脱いでもらった。だからチズちゃんの家のカーベットは、アメリカ人家庭のようにクリーニングを頻繁にする必要がなかった。
アメリカ人は数年毎に室内のインテリアを変え、室内の壁を塗り替えカーペットは2~3年毎にクリーニングをする。そのせいでカーペットクリーニング会社がテレビで何時もCMをながしている。
カーペットクリーニングは、業者専用車が家の前に横付けされ、洗剤の入った掃除機のような器具で一度洗い、汚れた水を吸い取った後、すすいで乾燥機で乾かす。クリーニング後は、少し湿っぽいが半日もすると完全に乾き、もとのようなキレイなフワフワのカーペットになるのが気持がよい。
料金は家の部屋数や広さによってまちまちだったが、割と良心的で我が家の場合は300ドル位だった。アメリカで家を持つと大体家の前は芝生で、日本のように家を囲むような塀がないのでとても広く感じる。何時もキレイにするために一週間に一度は芝刈りをする必要がある。
自分で芝刈りする人もいるが、チズちゃん達は二人とも仕事をしているので、ガードナーを雇い一週間に一度は芝刈りと庭の掃除、スプリンクラーでの水やりや植物の剪定などもお願いしていた。ガードナーは、その頃日系人が多く、勤勉で人気があった。我が家のガードナーは日系人のジョージだった。
ガードナーのジョージは60歳代、とても気の利く働き者だった。チズちゃんは日本からお土産を買って来るとジョージはとても喜んでくれた。10年以上たったある朝、突然ジョージが仕事に来なくなった、彼は休む前には必ず連絡をくれていたので、チズちゃんは急に病気にでもなったのかと心配した。
心配でジョージに電話をしてみる事にした、すると、彼が電話口に出てきた。チズちゃんが「大丈夫ですか」と聞くと「OK」だとういう。するとジョージは突然「今日限り、ガードナーを止めさせてください」と言った。それ以来、彼は我家には二度と現れなかった。キツネにつままれた様な話だった。
後日、ロスアンゼルスの日系新聞「羅府新報」を友人宅で読んでいると、一面に大きな写真が目に入った。タイトルは「日系人、ラスベガスでジャックポット(大当たり)」。何と、その写真には満面の笑みを浮かべたジョージが写っていた。彼が仕事を辞めた理由が分かった。賞金は16万ドルだった。
ジョージの話はさておき、前庭の芝生は何時もキレイに刈っておく必要がある。芝生をほったらかしていると近所からクレームが来る。隣近所の事も考えて、住んでいる地区をキレイにしておくことが鉄則。そうするとその地域の価値が上がり地価もおのずと上がるとアメリカ人は考えているのだ。三毛猫タヌー
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