99 ノリ君

ある日、ロスから成田に向かっている機内で同僚のブラジル人乗務員が「ちょっと来て、面白い人がいるから」とチズちゃんをキャビンまで呼びに来た。行ってみると若い日本人の青年が満面の笑みを浮かべて待っていた。ちょっとポッチャリとした色白の彼は「ノリです」と名乗った。

ノリ君は輸出入の仕事をしていて、世界中から色々な物を仕入れてアメリカと日本を中心に製品を販売しているという。事務所はロスと東京にあり、1ヶ月に一度、日本とアメリカを往復していた。年齢はまだ19歳だったが、オーストラリアとアメリカに学生の頃暮らした経験があった。

ノリ君は、若い頃からの海外暮らしで性格は物怖じせず、行動的でチャレンジ精神に溢れていた。チズちゃんがロスに居る時には、グレンデールの家に時々遊びにきて、テリーと3人で食事をする仲になった。彼の食べっぷりは見事でほっておくと、みんなの料理まで食べる勢いだった。

最初からノリ君と呼んでいたので、何カ月も本名を知らなかった。彼は『パーロス・ヴェルデ』の市長さん宅の離れに住んでいて、チズちゃんの住むグレンデールまで一時間程かかったが、困ったことが起きて電話をすると、すぐに駆け付けてくれるスーパーマンのような人だった。

ノリ君はチズちゃんよりも12歳も年下だったが、精神的にはとても大人で話をしていても飽きることはなかった。ビジネスのこととなると何処にでもすぐ飛んで行きフットワークがいい。そんなに流暢でもない英語だが、その熱意で何時も相手が根負けして納得させられていた。

ノリ君は、新商品の販売を始める時は、必ずチズちゃんに「今度こんなものを日本から輸入してアメリカで売るのだけど、どう思う」と質問をした。チズちゃんも感じた通りにアドバイスをすると、割とそれが功をそうして上手くゆく場合が多かった。

時々、日本から輸入したものが在庫で残ったりするとチズちゃんは友人や知人に声をかけて販売を手伝ったりしていた。ノリ君のオフィスには電話番の事務員の女の人が一人いるだけなのでノリ君は営業に走りまわり、仕事は山ほどあった。

その後アメリカでの波乱万丈のチズちゃんの人生は、何度も危機を迎えたが、その度にノリ君に助けられ感謝している。彼は何時も明るくポジティブで、チズちゃんが落ち込んでいる時でも会うと気分が晴れる。友人としては最高だ。人間、エネルギーのある人のそばにいると自分も元気になれる。

先日、ノリ君にメールをしてみると相変わらずコロナにも負けず元気に日本とアメリカを往復していると言っていた。何十年経ってもノリ君のバイタリティーは不滅だ。三毛猫タヌー

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