109 ショッピングモールでの出会い

ある日、近所の友人夫婦がショッピングに行こうと誘ってくれた。チズちゃんを気遣ってのことらしい。余り行きたくはなかったが家にいるよりましかも知れないと一緒に行くことにした。ショッピングモールは近所だった。ウィンドーショッピングをしていると少し気が晴れた。

周りを見回すと買い物客がみんな楽しそうに笑っている。そしてチズちゃんだけが不幸のど真ん中に居るように感じた。幸せそうな人々を見ると余計にチズちゃんの置かれた現実を強く感じられずにはいられなかった。バラ色の人生ではなく灰色の人生だった。

そのショッピングモールの一角にペットショップがあった。友人夫婦は犬好きで、大きな白黒のアイリッシュ・シープドッグを飼っている。ケージの中には色んな種類の犬がいた。寝ているのや愛嬌を振りまく犬、鳴いているのやら色も様々。ケージの前には値札がはってあり、かなり高価な犬もいる。

ケージには、少し育ち過ぎたアプリコット色で毛がふさふさした子犬がいた。つまらなそうに寝そべって、人が来ても起き上がる風もなく愛想もない。チズちゃんが、その犬を見つめると「何だよ」という表情でベターっと顔を床につけたまま、上目遣いにチズちゃんを見上げた。

友人が何を思ったのか「あっ、この犬きっと賢いよ。飼ってみれば」と。彼らは犬好きだから見る目があるのかしらとチズちゃんは思った。でも、犬を飼う積りでペットショップに入った訳ではない。もし犬を飼うならシェルターの保護犬にした方が少しでも不幸な犬を減らす事が出来ると。三毛猫タヌー

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