チズちゃんは18歳まで両親と暮らしていたが、大阪の大学に入学と同時に下宿生活をよぎなくされた。その頃、お母さんは二人の弟と香川県丸亀市の社宅に住み、お父さんは単身ブラジルに出向していたので家族がそれぞれ違った場所にバラバラに暮らしていた。
チズちゃんの下宿先は、西宮市仁川にあるお父さんのいとこモモちゃんの所だった。モモちゃんというとカワイイ感じがするけれど、とてもモダンな白髪のおばあさんだった。お父さんもモモちゃんのことを「モダンばあさん」と何時も呼んでいた。家は川沿いにある白い洋館だった。
モモちゃんには子供がなく、未亡人で大きな家の3部屋を関西学院が近くにあるということもあり、女子学生に部屋を貸して下宿屋をしていた。その一部屋をチズちゃんが借りることになったのだ。部屋といってもガラス張りのサンルームで朝日がこうこうと照り、まぶしくて寝坊は出来なかった。
チズちゃんが無理にお願いしたので、この部屋しか空いていなかったらしい。でも、初めての一人暮らしはとても新鮮だった。何か大人になった気がした。別の部屋を借りている関学の上級生と一緒にダンスパーティーにいったり、まだ二十歳前なのにバーに歳を偽って行き、お店の人に睨まれたりもした。
毎日、楽しかった。1960年代といえば、まだ汲み取り式のトイレが多かったがモモちゃん宅は水洗トイレで気持良かった。そのせいで戦後すぐにモモちゃんの家は米軍に接収されて、家中を白いペンキで塗りたくられて、返却された時には大変な思いをしたとモモちゃんはチズちゃんに話したことがある。三毛猫タヌー
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